セミリタイアに必要な資産額はいくら?0.01%ルールで逆算する

「あといくら貯まったら、仕事を辞められるんだろう」。一度は電卓を叩いたことがあると思います。ところが多くの人はここで手が止まります。生活費を年数倍しても、それは資産を使い切る前提の数字でしかなく、運用しながら取り崩す現実とは合わないからです。

この記事では、Nick Maggiulli『Just Keep Buying』で紹介されている0.01%ルールを使って、必要な資産額を逆算する方法を整理します。計算はすべて式と数値を載せているので、手元の電卓でも追えます。読み終えたあと同じ計算を自分の数字でやりたくなったら、セミリタイアメーターに入力すれば同じロジックで年数まで出ます。

目次

「いくらあれば辞められるか」に答えが出ない理由

必要額の計算がうまくいかない原因は、たいてい次の2つです。

  • 取り崩しながら運用する状態を計算に入れていない。減っていく残高の上で利回りが回るので、単純な割り算では合いません。
  • 「完全に辞める」前提で考えている。実際には週3日働く、フリーランスで月10万稼ぐ、といった中間の選択肢があり、必要額はそこで大きく変わります。

0.01%ルールは、このうち1つ目に対する答えです。

4%ルールと0.01%ルールの違い

取り崩しの目安として有名なのは4%ルールです。1998年のTrinity Studyが示した「資産の4%を毎年引き出せば30年はもつ」という研究に由来します。年に1回、決まった割合を取り出す考え方です。

対して0.01%ルールは、毎日、その日のリスク資産残高の0.01%までを使ってよいと考えます。年に換算すると 0.01% × 365日 = 3.65%。4%より少しだけ保守的です。

差は数字の大きさより性質にあります。4%ルールは基本的に初年度の額を固定して物価調整していく運用が多いのに対し、0.01%ルールは常に「いまの残高に対する率」です。相場が下がれば使える額も自動的に減り、上がれば増える。判断を挟まずに支出がブレーキを踏んでくれる、という設計です。

必要な資産額を逆算する

使いたい金額から必要額を出す式は1本だけです。

1日あたりの目標額 = 月の目標額 × 12 ÷ 365
必要リスク資産額 = 1日あたりの目標額 ÷ 0.0001

たとえば月5万円を資産から取り出したいなら、5万円 × 12 = 60万円、60万円 ÷ 365 = 約1,644円が1日あたりの目標額。これを0.0001で割って 約1,644万円となります。まとめると次のとおりです。

資産から取り出したい額(月)0.01%ルールでの必要額4%ルールでの必要額
3万円約986万円900万円+86万円
5万円約1,644万円1,500万円+144万円
8万円約2,630万円2,400万円+230万円
10万円約3,288万円3,000万円+288万円
15万円約4,932万円4,500万円+432万円
20万円約6,575万円6,000万円+575万円
25万円約8,219万円7,500万円+719万円

4%ルールより1割ほど多く必要になります。この差を「厳しすぎる」と見るか「余白」と見るかは考え方次第ですが、少なくとも取り崩しの前提を1本の率にそろえて比べられるようになります。

「全部辞める」をやめると必要額は一気に下がる

セミリタイアで効くのはここです。資産から取り出す必要があるのは、生活費のうち労働収入で埋まらない差額だけ。式にすると次のようになります。

ギャップ = 希望する生活費 − 労働収入
調整後ギャップ = ギャップ × 1.15  ※国民健康保険料・国民年金保険料の概算15%
必要リスク資産額 = 調整後ギャップ × 12 ÷ 365 ÷ 0.0001

会社を辞めると 社会保険料の負担が自分持ちになるため、ここでは15%を上乗せしています。月25万円で暮らす場合の必要額を、労働収入の額ごとに並べます。

働いて得る収入(月)資産で埋める差額15%上乗せ後必要リスク資産額
0円(完全リタイア)25万円28.75万円約9,452万円
5万円20万円23.00万円約7,562万円
10万円15万円17.25万円約5,671万円
15万円10万円11.50万円約3,781万円
20万円5万円5.75万円約1,890万円

完全リタイアの9,452万円に対し、月15万円だけ働くなら3,781万円。必要額が6割減ります。月20万円稼げるなら1,890万円で、完全リタイアの5分の1です。

「いくら貯めるか」を1万円増やす努力より、「月にいくら稼ぎ続けられる状態を作るか」のほうが、到達可能性に効くということでもあります。

到達までの年数はどう決まるか

必要額が出たら、次は「そこまで何年かかるか」です。セミリタイアメーターは月単位で、次の式を600か月(50年)ぶん回しています。

翌月の残高 = 当月の残高 × ( 1 + 月利 ) + 毎月の積立額

  月利(積立フェーズ) = ( 想定年利 − 3.65 × ( 1 − 再投資率 ÷ 100 ) ) ÷ 100 ÷ 12
  月利(セミリタイア後)= ( 想定年利 − 3.65 ) ÷ 100 ÷ 12

想定年利の初期値は5.0%(S&P500の長期平均・インフレ調整前)。ここから取り崩し分の3.65%を引くので、セミリタイア後の実質的な純成長は年1.35%になります。取り崩しながらでも資産が目減りしない、というのがこのルールの狙いです。

月10万円の上乗せ(必要額3,288万円)を目標にした場合の到達年数です。想定年利5.0%、再投資率0%で計算しています。

いまのリスク資産積立5万円/月積立10万円/月積立15万円/月
0円41.1年23.3年16.4年
300万円36.2年20.9年14.8年
500万円33.2年19.3年13.7年
1,000万円26.0年15.5年11.0年

まだ取り崩していないなら「再投資率」を上げる

上の表がやや厳しく見えるのには理由があります。再投資率0%は「0.01%ルールで使える分を、いまこの瞬間から毎日使い切っている」という設定だからです。積立中でまだ一円も取り崩していないなら、実態に合うのは再投資率100%のほうです。

積立額(月)再投資率0%再投資率100%短縮
5万円33.2年19.5年13.7年
10万円19.3年13.5年5.8年
15万円13.7年10.4年3.3年

※いずれも初期リスク資産500万円・目標3,288万円・想定年利5.0%。

積立5万円のケースで13.7年変わります。シミュレーターを使うときは、まずこの欄を自分の状態に合わせてください。結果がいちばん大きく動く入力です。

この計算が見ていないこと

数字が一人歩きしないように、前提の穴も書いておきます。

  • 暴落の順番。毎月きれいに年利5.0%で増える決定論的な計算です。取り崩しを始めた直後に大きく下げる「シークエンス・オブ・リターン・リスク」は表現できません。ここが現実でいちばん怖い部分です。
  • インフレ。想定年利5.0%はインフレ調整前の数字です。物価上昇を織り込むなら、想定年利を実質ベース(3%前後)に下げて計算し直してください。必要額も、いまの物価での金額です。
  • 公的年金。受給開始後の収入は入れていません。60代以降は実際より厳しめの結果になります。国民年金の給付額推移もあわせて見ておくと、必要額の感覚が変わります。
  • 税金と社会保険料の個別計算。「×1.15」はあくまで概算です。実際の負担は住む自治体と前年所得で変わります。運用益にかかる20.315%も、必要額の外側で効いてきます。
  • 信託報酬・為替・個別銘柄。いずれも考慮していません。

まず動かしてみる

ここまでの式をそのまま実装したのがセミリタイアメーターです。いまの資産・毎月の積立額・目標を入れると、到達までの月数とそのときの年齢、資産推移のグラフが出ます。

おすすめの使い方は、数字を1つだけ動かして差を見ることです。積立を2万円増やすと何年縮むか。労働収入を月5万円足すと必要額がいくら下がるか。絶対値より、その感度のほうが判断に効きます。

この記事で使った数値のまとめ

項目出典・根拠
1日あたりの取り崩し率0.01%Nick Maggiulli『Just Keep Buying』
年換算の取り崩し率3.65%0.01% × 365日
比較対象の引出率年4.0%Trinity Study (1998)
想定年利5.0%S&P500の長期平均(インフレ調整前)
セミリタイア後の実質純成長年1.35%5.0% − 3.65%
社会保険料等の上乗せ15%国民健康保険料・国民年金保険料の概算
運用益への課税20.315%所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%
計算する最長期間600か月(50年)セミリタイアメーターの上限

最終更新:2026年9月15日

本記事の試算は上記の前提に基づくものであり、将来の運用成果を保証するものではありません。特定の金融商品を推奨するものでもありません。税や社会保険の個別の取り扱いについては、税務署・年金事務所・専門家にご確認ください。

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