年収300万円以下で奨学金が返せない人へ|使える2つの制度を解説

「毎月の奨学金の返済が家計を圧迫している…」「非正規で働いているけど、正直きつい」
そう感じている方に、ぜひ知っておいてほしいことがあります。

JASSOが令和7年2月に発表した令和6年度の最新調査によると、奨学金を3か月以上延滞している人の約6割(60.9%)が年収300万円以下という実態が明らかになっています。

低収入だから仕方ない——と諦めてしまう前に、知っておいてほしい公式制度が2つあります。「返還期限猶予制度」「減額返還制度」です。

この記事では、2つの制度の内容・条件・申請方法をわかりやすく解説します。延滞のリスクを回避しながら今の生活を守るための選択肢として、ぜひ参考にしてください。

目次

奨学金を延滞している人の約6割は年収300万円以下——JASSOの調査でわかった実態

「返済できないのは自分の管理が悪いから」と思っていませんか?実は、そうとは言いきれません。

JASSOが令和7年2月に公表した「令和6年度奨学金の返還者に関する属性調査」では、奨学金を延滞している人(延滞者)と延滞していない人(無延滞者)の属性を詳細に比較しています。その結果は、延滞の背景に「収入の低さ」が大きく関わっていることを示しています。

延滞者の年収分布:年収300万円以下が約6割

奨学金を延滞している人の年収を見てみると、次のような結果になっています。

年収帯延滞者無延滞者
0円(無収入)8.5%3.0%
100万円以下13.9%4.3%
100万〜200万円以下18.0%7.4%
200万〜300万円以下20.5%19.7%
300万円以下 合計60.9%34.3%
300万〜400万円以下17.9%22.6%

出典:JASSO「令和6年度奨学金の返還者に関する属性調査結果【概要】」(令和7年2月公表)

延滞者のうち年収300万円以下の割合は60.9%。一方、無延滞者では34.3%にとどまります。この差は一目瞭然です。

年収300万円以下で奨学金を返済している人が延滞してしまうのは、意志の問題ではなく「収入と返済額のバランス」という構造的な問題です。

正社員・非正規の違いも大きい

職業についても、延滞者と無延滞者では大きな差があります。

職業延滞者無延滞者
正社員・従業員46.2%79.0%
非正規社員・従業員27.4%11.9%
無職・失業中・休職中13.2%4.1%

延滞者の約4割が非正規または無職という現実があります。毎月固定の奨学金返済を、不安定な収入でこなし続けることの難しさが数字に表れています。

延滞の理由1位は「低所得」——そして9割以上が制度を知らなかった

延滞している理由として最も多かったのは「本人の低所得(62.8%)」。次いで「他の借入金の返済(34.5%)」「奨学金の延滞額の増加(31.1%)」と続きます。延滞が始まると遅延損害金が積み上がり、さらに状況が悪化するという悪循環に陥りやすいのが実態です。

そして最も深刻な問題が、救済制度の認知率の低さです。

  • 「返還期限猶予制度」を返還が始まる前に知っていた延滞者:10.9%(無延滞者は41.7%)
  • 「減額返還制度」を返還が始まる前に知っていた延滞者:7.2%(無延滞者は34.5%)

ポイント
延滞者の半数以上(猶予制度:50.2%、減額制度:35.6%)は、督促を受けて初めて制度を知ったという結果になっています。困ってから知るのではなく、今のうちに知っておくことで延滞を未然に防げます。

知らないと損する制度①「返還期限猶予制度」——返済をいったん止められる

まず1つ目の制度、「返還期限猶予制度」から解説します。

返還期限猶予制度とは?

奨学金の返還を、一定期間「猶予(先延ばし)」できる公式制度です。収入が少ない・失業中・病気など、一時的に返済が困難な状況にある方が対象です。猶予期間中は毎月の返済が止まり、生活の立て直しや求職活動に集中できます。猶予期間は通算で最長10年間です。

猶予を受けられる主な条件

返還期限猶予は、以下のような状況にある人が申請できます。

  • 経済困難:年収が一定基準以下(給与所得者で年収300万円以下が目安)
  • 失業・無職:ハローワークへの求職登録が条件になる場合あり
  • 傷病:病気・けがで就労・収入が困難な状態
  • 災害:自然災害や火災などで被災した場合
  • 産前産後・育児:出産・育児による収入減少
  • 大学院進学・海外留学:在学中は返還が猶予される

第一種奨学金(無利子)は猶予中も利息がかかりません。第二種奨学金(有利子)は猶予中も利息が発生し続ける点に注意が必要です。

返還期限猶予の申請方法

申請はJASSOの「スカラネット・パーソナル」(Web)または郵送で行えます。

  • スカラネット・パーソナル(https://scholar-ps.sas.jasso.go.jp/)にログイン
  • 「返還期限猶予申請」メニューから手続きを進める
  • 収入証明書・給付金受給証明書など、事由に応じた書類を提出
  • 審査通過後、猶予が開始される

猶予中に生活を立て直し、収入が安定したら返済を再開できます。延滞になるより、猶予を正式申請するほうが信用情報への影響もなく、はるかに有利です。

知らないと損する制度②「減額返還制度」——毎月の返済を半分以下にできる

2つ目の制度は「減額返還制度」です。完全に止めるほどではないが、毎月の返済がしんどいという方に特に向いています。

減額返還制度とは?

毎月の返還額を2分の1または3分の1に減額できる制度です。減額した分は後払い(返還期間が延長される)となるため、総返還額が増えるわけではありません。収入が安定している年は通常の返済に戻り、再び厳しくなれば再申請できる柔軟な仕組みです。

POINT 令和6年4月から減額返還制度が変わりました

1.減額返還方法の追加

当初の返還月額を2分の1または3分の1に減額して返還する方法に加え、4分の1または3分の2に減額して返還する方法も選択できるようになりました。

2.収入基準の緩和

減額返還制度を利用可能な年収上限について、年間収入金額325万円以下(年間所得金額225万円以下)から、年間収入金額400万円以下(年間所得金額300万円以下)に引き上げました。
また、本人が扶養している子供の人数が2人の場合は年間収入金額500万円以下(年間所得金額400万円以下)、3人以上の場合は年間収入金額600万円以下(年間所得金額500万円以下)まで更に引き上げました。

あわせて読みたい
月々の返還額を少なくする(減額返還制度) 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の公式ホームページです。

減額できる条件

減額返還制度を利用できるのは、以下の条件を満たす方です。

  • 年収の目安:給与所得者で年収400万円以下(扶養家族の人数によって変わります)
  • 現在、奨学金の返還中であること
  • 前年度の収入証明書(源泉徴収票・確定申告書など)を提出できること

年収400万円という数字はあくまで目安です。扶養している家族の人数によって、実際の判定基準額は変わります。「自分は対象かな?」という方は、シミュレーターで確認してみてください。

具体的にどれくらい減額されるのか

たとえば、月々の返済額が1万5,000円の場合、減額返還制度を使うとこうなります。

返還方式毎月の返済額変化
通常返還15,000円
2分の1減額7,500円▲7,500円/月
3分の1減額5,000円▲10,000円/月

月に7,500〜10,000円の余裕が生まれるのは、年収300万円以下の生活では非常に大きな差です。食費・光熱費・通信費など、生活の底上げに使える金額が変わります。

減額返還の申請方法

申請手続きは返還期限猶予と同様、スカラネット・パーソナルまたは郵送で行えます。

  • スカラネット・パーソナルにログインし、「減額返還申請」を選択
  • 前年の所得証明書(源泉徴収票や確定申告書類)を準備して提出
  • 審査を経て、翌月以降の返済額が変更される

減額返還は1年単位で更新する仕組みです。収入が回復した年は通常返済に戻り、再び厳しくなれば再申請できます。年ごとに状況を見直せる柔軟さが魅力です。

自分の返済額、シミュレーターで確認してみませんか?

「猶予と減額、どちらが自分に向いているか迷う」「そもそも月々の返済でどれだけ負担が変わるのか知りたい」——そんな方は、シミュレーターを使ってみてください。

年収・月々の返済額を入力するだけで、減額後の返済スケジュールや総返済額がすぐにわかります

→ 入力は3ステップだけ。すぐに結果が表示されます。

猶予と減額、どちらを選ぶべき?状況別の判断基準

2つの制度を知っても「どちらが自分に合っているの?」と迷う方も多いはずです。状況別に整理してみましょう。

状況別:猶予 vs 減額 選び方の目安
失業中・無職・育休中で収入がほぼゼロ

返還期限猶予が向いています。収入がない期間は、まず支払いを止めることを優先しましょう。

収入はあるが毎月の返済が家計を圧迫している

減額返還制度が向いています。返済を続けながら月々の負担を半分以下に抑えられます。

年収300万円前後でぎりぎりのライン

→ まずシミュレーターで自分の条件を確認してみてください。扶養家族の有無で判定が変わる場合があります。

すでに延滞してしまっている

→ まずJASSOの奨学金相談センターに電話しましょう。延滞中でも制度を利用できるケースがあります。同調査では延滞者の26.3%が相談センターへの電話を最初の行動として選んでいます。

猶予と減額は同時に利用することはできませんが、年ごとに切り替えることは可能です。状況が変わったら、都度見直しましょう。

申請前に知っておくこと——よくある疑問3つ

Q. 申請すると信用情報(ブラックリスト)に影響しますか?

猶予・減額を利用しても、信用情報には記録されません。金融機関の審査に影響することもありません。あくまでJASSOが設けた公式の返済調整制度であり、正当な手続きです。むしろ、延滞が続くほうが信用情報に傷がつくリスクがあります。早めに制度を使うことが、信用を守ることにもつながります。

Q. 申請の期限はありますか?

厳密な「申請締め切り」はありませんが、困ってから申請すると、審査が通る前に延滞が発生してしまうことがあります。「なんとなく返済がきつい」と感じたタイミングで早めに動くのがベストです。特に減額返還制度は年単位の更新なので、余裕があるうちに申請しておくことをおすすめします。

Q. 手続きは難しいですか?

基本的にはスカラネット・パーソナル(Web)から申請でき、難易度はそれほど高くありません。必要書類は収入証明書(源泉徴収票・住民税決定通知書)などが中心で、ほとんどの場合は手元にある書類で対応できます。

まとめ:低収入でも使える制度はある。知ることが最初の一歩

今回の記事のポイントをまとめます。

  • 奨学金を延滞している人の約6割が年収300万円以下(JASSO令和6年度調査)。延滞は意志の問題ではなく、収入と返済のバランスの問題
  • 延滞者の9割以上が返還開始前に救済制度を知らなかった。知っているだけで延滞を防げる可能性がある
  • 返還期限猶予制度:失業中・低収入なら返済を最長10年止められる。信用情報への影響なし
  • 減額返還制度年収400万円以下なら毎月の返済を4分の1〜3分の2に減らせる。1年ごとに更新
  • どちらもスカラネット・パーソナルから申請可能。困ってから動くより、早めに手を打つことが大切

制度を知らないまま無理をして延滞してしまうのが、最もリスクの高い選択です。まずシミュレーターで今の返済状況を数字で把握し、必要であれば制度を活用しましょう。

まず、自分の返済状況を数字で把握しよう

「月々いくら払っているか」「猶予・減額を使ったら総返済額はどう変わるか」——これを把握しているだけで、制度を使うかどうかの判断が格段にしやすくなります。

シミュレーターに入力するだけで、通常返済と減額返済のシナリオを並べて比較できます

→ 入力は3ステップ。今すぐ確認できます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次