当ツールは自分の残業代が正しいか検算する道具であって、請求額を計算する道具ではありません。
残業代が合っているかを確かめるとき、先に出すべきなのは残業時間ではなく基礎時給です。月給を「1か月の平均所定労働時間」で割った金額——これが割増計算の出発点で、ここがずれていれば後ろの掛け算をどれだけ丁寧にやっても答えは合いません。このツールはまず基礎時給を出し、その上に労働基準法37条の割増率を重ねます。
計算はすべて法律上の最低ラインで行います。就業規則で法定を上回る割増率や休日の扱いを定めている会社なら、実際の支給額はここで出る金額より多くなります。逆に給与明細の額がこの試算を下回っているなら、まず就業規則と労働条件通知書を確認してください。差額がそのまま請求できる金額になるわけではなく、確かめる順番があります。
算出ロジックと前提仮定
このシミュレーターの数値は、すべて以下の式・仮定・出典をもとに、概算値として算出しています。
算出式
基礎時給 = 月給 ÷ 1か月平均所定労働時間
1か月平均所定労働時間 =(365 − 年間休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12
月給30万円・年間休日120日・1日8時間の人なら、(365 − 120)× 8 = 1,960時間、これを12で割って月あたり163.3時間。300,000 ÷ 163.333… = 1,836.73円が基礎時給になります。
このツールが基礎時給を1,837円ではなく小数第2位まで表示するのは、読者が自分で電卓を叩いて突き合わせられるようにするためです。1,837円で丸めてしまうと、残業40時間分では約13円の差が出て「合わない」に見えてしまいます。割増賃金の計算では、円未満の端数は各時間帯の掛け算のたびに丸めるのではなく、1か月の総額を出したあとに一度だけ処理します。
割増賃金 = 基礎時給 × 割増率 × 時間数。割増率は労働基準法37条と関連政令が定める最低限度で、内訳は次のとおりです。
| 労働の種類 | 割増率 |
|---|---|
| 法定内残業(所定を超え、1日8時間以内) | 1.00(割増なし・時間分の賃金のみ) |
| 時間外労働(1日8時間・週40時間超/月60時間以内) | 1.25 |
| 時間外労働(月60時間超) | 1.50 |
| 時間外労働が深夜(22時〜5時)にかかった分 | 1.50 |
| 月60時間超の時間外労働が深夜にかかった分 | 1.75 |
| 法定休日労働(時間数にかかわらず全時間) | 1.35 |
| 法定休日労働が深夜にかかった分 | 1.60 |
| 深夜割増の加算分(単独では発生しない) | +0.25 |
前提仮定
- すべて法定の最低ライン:割増率は労働基準法37条と政令が定める下限値で固定しています。就業規則で上回る定めがある場合は反映されません。
- 1か月平均所定労働時間:(365 − 年間休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12。うるう年(366日)は区別していません。
- 法定休日:時間外労働の概念が無いため、8時間を超えても全時間が1.35倍のままです。週1日の法定休日と、それ以外の所定休日(法定外休日)は区別して入力します。
- 深夜割増は内数:22時〜5時の労働に対する0.25は、時間外や休日の割増に上乗せされるもので、単独で1.25倍になるわけではありません。
- 基礎時給から除外できる手当は7項目の限定列挙:家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金。この7つ以外は除外できません。役職手当・資格手当・精皆勤手当・業務手当は基礎に算入します。
- 手当の名称ではなく実質で判断:住宅手当は家賃や住宅ローン額に応じて変動する実費補助的なものに限り除外でき、全員一律定額なら除外できません(平成11年3月31日 基発第170号)。家族手当・通勤手当も同様に、扶養人数や距離に関係しない一律支給は除外不可です。
- 時間の端数:労働時間は1分単位で計上するのが原則です。1か月の合計についてのみ、30分未満切捨て・30分以上切上げが認められますが、これは時間外・深夜・休日の区分ごとに行います(昭和63年3月14日 基発第150号)。
- 金額の端数:50銭未満切捨て・50銭以上切上げは、1か月の割増賃金総額に対して一度だけ適用します。時間帯ごとに丸めると誤差が積み上がります。
- 月60時間超の1.50倍は按分による近似:本来は暦日順に積み上げて60時間を超えた時点から適用しますが、このツールは日別の勤怠を受け取らないため、月合計から比率で按分しています。深夜時間が月末に偏っている場合などに実額とずれます(ツール内にも常時この注記を表示しています)。
- 平均との比較に使うデータ:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の所定内給与額。年間休日は「令和7年就労条件総合調査」(労働者1人平均116.6日/1企業平均112.4日)を用いています。
- 比較用の時給と基礎時給は分母も分子も違う:統計の所定内給与額には通勤・家族・住宅・別居・子女教育の各手当が含まれたままです。そのため平均比較に使う時給は、割増計算の基礎時給よりやや高めに出ます。同じ「時給」という言葉でも中身が異なる点にご注意ください。
このシミュレーターが扱っていないこと
- 月給制以外の賃金形態(日給制・時給制・年俸制・歩合給の併用)は扱っていません
- 変形労働時間制・フレックスタイム制・裁量労働制・事業場外みなし労働時間制は扱っていません(法定労働時間の判定そのものが変わります)
- みなし残業(固定残業代)の精算は扱っていません
- 管理監督者の判定は扱っていません。なお管理監督者であっても深夜業の割増賃金は適用除外になりません(最高裁第二小法廷 平成21年12月18日判決)
- 欠勤・遅刻早退による控除、休職・休業の期間は反映していません
- 年次有給休暇を取得した日の賃金は扱っていません
- 社会保険料・所得税・住民税の控除は行っていません(すべて額面ベースです)
- 都道府県別の最低賃金との照合は行っていません
- 振替休日と代休の区別、休日の事前振替による割増の消滅は扱っていません
- 36協定の上限時間(月45時間・年360時間など)を超えているかの判定は行っていません
- 時効(賃金請求権3年)・付加金・遅延損害金など、請求に必要な要素は一切含みません
- 本シミュレーターの数値は「検算用の概算値」であり、確定値でも請求可能額でもありません
- 本シミュレーターは予告なく内容・計算式等に修正/変更を加える可能性があります
出典
- 労働基準法 第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)|e-Gov 法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)
- 労働基準法施行規則 第19条・第20条・第21条(割増賃金の基礎となる賃金の算定、除外賃金)|e-Gov 法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023)
- 賃金が著しく低い場合等の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令|e-Gov 法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/406CO0000000005)
- 昭和63年3月14日 基発第150号(労働時間・割増賃金の端数処理)|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001310369.pdf)
- 平成11年3月31日 基発第170号(住宅手当を除外賃金とするための要件)|厚生労働省
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/dl/13.pdf)
- 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」(年間休日総数)
- 最高裁判所第二小法廷 平成21年12月18日判決(管理監督者と深夜業割増賃金)
最終更新:2026-09-20
免責事項
本シミュレーターの試算結果は、入力値と上記の前提にもとづく一般的な参考情報であり、個別の労働契約・就業規則・労使協定の内容を反映したものではありません。実際の賃金額を保証するものでも、法的な助言を行うものでもありません。給与明細の金額と大きく食い違う場合は、まず勤務先の人事労務担当部署にご確認ください。そのうえで解決しないときは、所轄の労働基準監督署、または社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。本ツールの利用によって生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。
